ナゼ兵庫県で
ハタラクのか。

〜兵庫県でシゴトをするということ〜

兵庫県でいろいろな仕事に就いている
20代~30代の5人が、
ライフスタイルを
熱く語り合い、「今ここで働く」意味を考えました。

第1章:
私たちが語りました

青木彩美(あおき・あさみ)さん

熊本県出身。2007年パソナ入社。

東京で派遣部門の営業部で勤務後、18年に淡路島へ。38歳。

「淡路島でキャリアママとして
パソナグループの人事の仕事を
しています」

シゴト

2008年からパソナグループが淡路島でチャレンジしている地方創生事業に、営業部で活躍していた夫が心機一転、挑戦したいと言い、2018年に2人の子を連れて家族で移住してきました。今年で5年目ですが、2年前に3人目を兵庫県で出産し、去年6月に復職。現在、2歳、5歳、8歳の子どもたちの育児をしながら、キャリアママとして、人事で移住促進や移住してこられる従業員の生活支援・仕事支援などをしています。

伊藤絵実里(いとう・えみり)さん

千葉県船橋市出身。

神戸地域おこし隊の傍ら、茅葺きの振興に取り組む㈱くさかんむり(神戸市北区)で働く。24歳。

「神戸地域おこし協力隊で
北区山田町に住み
茅葺きで地域を盛り上げる会社で働いています」

シゴト

千葉大学3年のコロナの年に1年間休学し、香川県高松市、岡山県西粟倉村、神戸市でインターンやアルバイトを体験しました。その中で神戸がすごく面白かったので就職を機に神戸にIターン。神戸市独自の神戸地域おこし隊に所属し、神戸市北区山田町に住みながら、株式会社くさかんむりという茅葺き屋根の職人がたくさんいる会社で、茅葺きを軸に地域を盛り上げることをミッションに、今、いろいろ活動をしています。

鈴木友子(すずき・ともこ)さん

茨城県出身。
2013年フェリシモに入社。

20年4月から1年間の産育休を取得後に復職。33歳。

「フェリシモで生活雑貨商品を企画。
ひょうご暮らしも10年目になりました」

シゴト

株式会社フェリシモで、ファッションや雑貨のカタログ制作を経て現在は、生活雑貨事業部で猫部・キャラクター・YOU+MORE!の商品開発を担当をしています。神戸は都会的で、海も山も近いし、ディープな場所もいっぱいあって、なんか楽しそうな街だなぁっていう、ふわふわした気持ちでやってきて10年目になります。実際に住んでみると、街の規模感もちょうどいいし、大阪へも京都へも出かけやすい。自然も豊かで、めちゃくちゃ住みやすいと感じています。

中瀬拓哉(なかせ・たくや)さん

豊岡市出身。

2020年に但馬信用金庫に入庫。25歳。独身。

「大学卒業後、ふるさと豊岡に戻り
但馬信用金庫で働いています」

シゴト

兵庫県北部にある豊岡市出身で、生まれも育ちも豊岡。大学で和歌山に4年間出た後、2年前に帰ってきて、但馬信用金庫という金融機関で貸付係として働いています。金融機関で働けば人生でとても大切なお金についての知識が得られて、大好きな地元に地域活性化で何かお手伝いができるのではないかなと思って就職しました。

諸富稜(もろとみ・りょう)さん

西宮市出身。

㈱MOVEDOOR 代表取締役。広報PRプランナー/クリエイティブディレクター。25歳。

「三田の古民家再生オフィスで
広報PR会社を学生起業し5年目です」

シゴト

関西学院大学3年の時に仲間5人と立ち上げた広報PR会社㈱MOVEDOOR 代表取締役をしています。コンセプトは「令和の軍師」。着物を着た軍師スタイルで仕事をしています。コロナ禍を乗り越えて5年目の現在、パートアルバイト含めて20人規模のチームで、企業のブランディング、プロモーションを手掛けています。三田市内の空き家を再生して作ったオフィスは、学生の活動拠点となり、子ども食堂も定期開催しています。

−−青木さん、移住に迷いはなかったの?

青木 初めて夫から聞いた時はポロッと涙がこぼれました。淡路島が嫌とかではなくて、頼れる身内がいない中で初めての子育てをしていた東京杉並区が本当に恵まれた環境だったので離れるのが寂しかったんだと思います。
でもママ友たちがみんな「行った方がいい。離れても絶対つながってるから大丈夫」と背中を押してくれました。そこから自分の気持ちも変わって「そうか、もう人生のネタにしよう!」って思ったんです。辞令がない限り島暮らしなんてできないし。今思えば、移住を決めたころは情報も少なかった。淡路島事業もまだ走り出したところで従業員も本当に少なくて。やっぱり無知って怖いなとすごく感じています。

3人目の出産後、初めて子どもたちを夫に預け、東京のママ友2人と京都旅行した青木さん。大切な友人たちとは今もつながっている

−−鈴木さんは?

鈴木 私は新しい場所に行ったり、それまでの友達と離れたりすることへの不安はないですね。高校まで過ごした地元は、私服を買う時は全員同じ場所。テイスト違いしか選択肢がないような町で、みんなもっと好きなものを好きなように選べたらいいのにと、ずっと思ってきました。東京の美術大学で4年間過ごし、一つ上の先輩が入社されていたフェリシモへ。「就職が決まったよ」と伝えた時、父母は寂しそうで、親が心配になる距離なんだなと思いました。

第2章

そもそも、なんで働いて
いるの?

「ありがとう」の言葉が返ってくる仕事が
基本的に好き。
淡路の、人と人との
素敵な距離感にも癒やされています。

青木さん

基本的に仕事が好きで、働いている時間をいかに作れるか、常に考えています。仕事が好きな理由は、人とコミュニケーションを取りながら「ありがとう」の言葉がもらえるから。パソナグループの企業理念「社会の問題点を解決する」にあるように、ちっぽけな自分かもしれないけれども、少しでも何かに貢献できて、「ありがとう」が返ってくることに充実感がある。働いた分、オフは好きな時間を過ごしたり、好きなものを食べたりも、人生の充実につながっています。移住してからはお金をかけずに自宅から歩いて行ける海辺にパンとコーヒーを持って家族でボーッとしたりする時間が好きになりました。
淡路の人は本当に優しくて、心に余裕があるからか応対もいつも穏やか。最初はドキドキしましたが、皆さん「よう来たねー」って言ってくださる。よく声も掛けられますし、ありがたいなって思っています。

自宅から徒歩10分の海がお気に入り。余裕がある日は朝ごはんをここで

人が個性的で面白い!
「自分たちでこの街を作っていこう」
というパワーがある。

伊藤さん

たまたま面白いインターン先が見つかって初めて来た神戸は面白い人たちがいっぱいいて、面白いなぁと。阪神・淡路大震災があったからか、自分たちでこの街を作っていこうっていうパワーを持っている人がすごく多い。しかも、新しいものを一から作るというよりは、今あるものを生かして新しいものを生み出すみたいな生産マインドがある。そんなところが、東京圏での生活で感じていた違和感を取り払ってくれました。
あと、役所の人に結構“変な人”が多くて面白い! 何かやる時も、行政が民間とつながっているからやりやすい。千葉と比較して、そんなふうに感じましたね。
大学にいた時、すごくモヤモヤしていたのは「社会に何も与えられてない」と思っていたから。自分でアクション起こしたら「変わってるね!」みたいな感じの目で見られることが多かったけれど、神戸に来たら、周りが変人だらけ。むしろ私、普通ぐらいの感じになって居心地いいみたいな……。

ワークショップ風景。手前が伊藤さん

鈴木 あっはっは(大爆笑)。例えば、どんな人たち?
伊藤 西村組、ご存じですか? 空き家物件を買って、それを壊した廃材で家を直す人たちです。そこのマネジャーさんの家に半年間居候してたら、いろんな人がまたやって来て。
宝塚に住んでいる市役所勤めの人で、35年フルローンで清荒神の物件を買って、インクラインという場所を持って、イベントや企画をやったりしている人もいます。
鈴木 初めて聞きました。すごく面白いですね。

いろんなカルチャーが
共存する街は毎日が刺激的!
「あったらすごく楽しくなる」
ワクワクする雑貨を作りたい。

鈴木さん

私が働いているカタログの通販会社では、これがないと生きていけないというわけではないけれど、あったら毎日がすごく楽しいと思える生活雑貨を作っています。子どもの頃に住んだ町は結構田舎で、可愛いものや自分がワクワクするものに触れる機会がほとんどなくて、それらをもっと浴びるように感じられる場所に行きたかった。国際色豊かな神戸は本当にいろんなカルチャーが共存している街で、休みの日も会社の人たちと遊びに行って、いろんな刺激をもらえる。今、私が会社でできていることって、もともとやりたかったこと。
さっき伊藤さんが大学時代の話をされましたが、学生の時は時間もお金も使って、頑張っていろんなことをしても、それをもとにお金を稼ぐ仕事にはつながりにくい。「せっかく頑張ってるんだから、これで儲(もう)かりたい」っていう気持ちがありました。やりたいことをやって、儲ける楽しみもある今、「ちゃんと仕事してるのか!」とつっこまれるのではと若干不安になってきました(笑)。

「相撲が好きで、相撲にまつわる商品を作った」鈴木さん。
「お好きな方にも、あまり詳しくない方にも、相撲の魅力を知ってもらえたら」

お金の知識を身につけ、地元の
中小企業のドクターとして
大好きな
故郷に恩返ししたい。

中瀬さん

金融機関で働こうと思った理由は、お金の知識を学びたかったことのほかにもう一つあります。小学校1年生の頃に台風23号という水害があり、豊岡市の大きな堤防が決壊して、自分の家も1メートル超えの浸水被害に遭いました。その時に地域や近所の人たちに助けてもらいながら、掃除や泥掃きをした経験があります。
大人になってから、それがあって今の自分があることに気づきました。お世話になった分、地域の人たちに今度は自分が何か提供できるものがあればと思って、Uターンして金融機関に勤めています。地域の中小企業の役に立ちたいと、中小企業診断士の資格にチャレンジして一次試験は合格。次のステージでも頑張ろうと思っています。
和歌山での大学時代に、大阪などへも遊びに行って楽しかったですが、いざ自分が今後ずっと暮らしていくと考えたときに、やっぱり地元がいい。自然が豊かで食べ物が美味しいところで暮らす方が自分には合ってるなと思いました。

中瀬さんは地元の美味しい食べ物が好き(写真は但馬牛)

ローカルな町から、大都会の企業の
挑戦や変化を
後押しする仕事が
できるから「面白い」んです。

諸富さん

人口11万人の三田で学生起業をして思うのは、チャレンジする若者が珍しいからか、市役所の人も周りの経営者の方たちも熱心にサポートしてくださっているということ。ありがたいです。仕事自体は市内に限らず、東京や大阪、京都の大きい会社も相手にしていて、毎日めちゃくちゃしんどいし、正直、大変です。
でも、いろんな業種のクライアント企業の挑戦や変化を後押しできることはすごく楽しくて、本当に飽きない。毎回新しく企画を考え、新しいアイデアを作る。ノウハウは積み重なっていっても、クリエイティブは毎回オーダーメイド。ずっと刺激があります。僕たちの仕事でお客さんが喜んでくれたり、世の中に面白いブランドが一つ増えたり。それで会社が成長するなら、こんなやりがいのある仕事はない。楽しいからやめられない。それは本音でもあります。
東京にも拠点を置いたので、大きい市場で大企業のブランディングやプロモーションもやっていくぞというギラギラした熱量はあります。でも、だからといって東京に住んだのでは面白くない。兵庫県三田市というローカルで地域貢献しながら、毎日着物を着て古民家で仕事している会社が、東京で活躍している方が僕的には面白い。みんながそっちへ行くなら、自分はこっちという天邪鬼的なところは昔から。そんな姿勢を面白がって「僕もローカルでやってみようかな」と思う人が増えたら、選択肢が広がっていいんじゃないかなと思います。

諸富さんは新しいことに挑戦することが好き

第3章:
ひょうごでハタラクって
何がいいの?

東京より淡路島に来てからの方が、
時間が上手に使えています。(青木さん)

今、諸富さんがおっしゃった面白み。確かに起業したり仕事をするのは東京や大阪がスタンダードという考え方はあると思います。ただ、これからは東京一極集中ではない。私たちパソナも「どこであっても自分らしく働ける社会」を作っていきたいという思いがあります。私自身の働き方は、東京と淡路島で変わっていませんが、時間の使い方は変わりました。
東京だと通勤時間がどうしても長い。ギュウギュウの満員電車に挟まれて、やっと駅に着いたら人込みをかき分けてオフィスまで歩く。ドアtoドアで片道1時間。それが今は車で2分ぐらいでオフィスに着く。通勤時間ほぼゼロなんです。通勤に使っていた時間は仕事に使ってもいいし、自分自身に使ってもいい。そこがすごく増えたので生産性もよくなったと感じています。

淡路島から1-2時間圏内への家族旅行が増えた(写真は大阪の海遊館)

クリエイティブな仕事をしながら、
自然豊かな生活を守り続けられる。(諸富さん)

三田はベッドタウンで、大阪や神戸に出勤して、自然のある暮らしを楽しむライフスタイルの人も多い。僕たちは駅前に事務所も自宅もありますが、プライベートと仕事の住み分けもものすごくしやすい。家賃が高い都内では職住近接はまず望めず、確実に通勤時間がかかる。地方だったら会社の近くに住んでも全く家賃が高くない。しかも、三田から伊丹空港までは車で45分ぐらい。そこから全国に行けます。大都会を相手にダイナミックでスケールの大きな仕事をしながら、ローカルな暮らしの豊かさも味わえます。

古民家オフィスで定期的に子ども食堂も開く

会社が移転して、海の目の前に。
視界も開けていて何でもできそう。(鈴木さん)

神戸で初めて住んだのが春日野道で、その次が灘のスナック通り、その次が兵庫駅の近く。すごく下町っぽいところにずっと住んできたのに、この間家を買って急に芦屋の住人に。そしたら、どこに住んでるかを人に言うのが恥ずかしくなりました。すごく現実的に、子どもを育てていくので、学校や地域の治安を考えてしまって。「今どこに住んでるの?」って聞かれて全然面白くない答えしかできないから言いたくない。

育休中がコロナ禍で外出できず。ミシンにはまって子供服作りが趣味に

−−そんな風に言っている鈴木さんが面白い。

鈴木 ほんとですか? うちの会社の人たち、みんな仲もよくて、目の付け所がそれぞれに違って、毎日会社に来ているだけなのに、すごく楽しいんです。会社の行き帰りの電車の中などで、人と違う何かを発見してきたりする。ミーティングをしていても「その目線、すごい!」みたいなことが多くて、いつも新鮮です。会社が移転して目の前が海になり、視界も開けて、何でもできそうだなって思えます。

豊岡ほど四季がはっきりして
楽しめる地域も珍しいですよ。(中瀬さん)

豊岡は、夏は暑いし、冬は雪がすごい。これほど四季がはっきりしている地域もなかなか珍しいと思います、日本海に面している但馬から、温泉のある城崎、山の方では出石。夏はすぐ海に行ける距離ですし、冬はスキーにもスノボに行ける。観光資源もかなりあり、結構広くて、いろんな地域産業も。働き出してからいろんな企業があることを知り、休みの日に歩いていると「ここにこの会社があったのか」と発見があったりして、とても楽しい。学生の時には知らなかった世界をどんどん知っていきながら、この地域で働いていきたいです。

竹田城の雲海は中瀬さんのお気に入りの景色の一つ

地域をよくするシゴトは時間がかかる。
縁に導かれて、これからも。(伊藤さん)

地域おこしの仕事に就く前は、地域で暮らして自分なりの地域創生の「型」みたいなものを身に着けて、将来的には、その自分の“武器”を持っていろんな地域に行って、全体をよくできたらいいなと漠然と考えていたんですけど、実際に地域に入って、いろいろやっていると、一つの地域を良くするのはすごく時間がかかることだと実感しています。都市と比べて圧倒的に時間の流れが遅い。何十年もそこに根ざしてやっているからこそ、地域から信頼を得られるという話も聞きます。やはり現場を知るって大事なことですね。
でも私、縁に恵まれてずっと生きてきた実感があるのです。その時のタイミングで縁がある場所と団体と、縁に導かれてこれからも生きていくんだろうなと思っています。

箱木千年家でのイベント。来客者に茅葺きの説明をする伊藤さん

−−ありがとうございました。