
Interview
go to Future
HYOGO VISION 2050
ひょうごの未来を支える
活動とその想い
〜ビジョンを体現する団体の取組み〜

多様な地域があるひょうごで
自分にあった拠点探しを
ひょうごビジョン:生命の持続を先導する社会 ~分散して豊かに暮らす~
一般社団法人Be 〈丹波市〉
丹波市からの委託で、移住して起業した仲間たちと移住相談窓口事業を請け負う「一般社団法人Be」。幼い頃から世界の多様な暮らしや問題にふれてきた、代表の中川ミミさんが目指すのは、誰もが生きがいを第一に考えられる“住み継がれるまちづくり”です。その活動のなかには、暮らす場所や生き方を見つけるためのヒントがありました。

経験と興味に導かれた
移住相談窓口の仕事
中川ミミさんはエチオピア生まれ。1歳の時に家族で丹波に移住しました。その間に、ご祖父母が暮らすエチオピアに帰省することも。「丹波では蛇口をひねれば水もお湯も出る、かたや祖父母が暮らす家では、水はくみにいかなければならず、いまだ電気もガスもありません。それでも豊かに暮らしているのですが、都市部ではホームレスや紛争難民の姿を目にすることも…。日本とは対極の暮らしを幼少期から目の当たりにしたことで、なんでこんなに差があるの?という疑問と、目の前に見えている社会がすべてではない、という思いがずっとありました」。そういった体験や思いから、中川さんは国際協力の道へ興味を抱くようになり、高校生の頃には学生団体を立ち上げ、さまざまなボランティア活動を経験。アメリカの大学を卒業後、現地で住宅支援やまちづくりに取り組む国際NGOに就職をしました。そして、東日本大震災の復興支援で参加したボランティアを機にUターンで丹波に戻ります。「国内でも、住まいを通じて活動してきた社会経験とスキルを活かせると気づきました。ふるさとの丹波で地域おこし協力隊として空き家バンクの事業に携わったことが、現在の移住相談窓口の仕事に至るきっかけです」。

移住者がちゃんと活躍できる
地域が存続するための土壌づくり
中川さんが設立に関わった「たんば“移充”テラス」では、移住相談、移住に伴う住まいと仕事、地域の情報の発信を行っています。目指すのは単に人口の増加ではなく、丹波がずっと住み継がれるまちになっていくことです。「人が一人増えてよかったね、ではなく、その人が本当に地域に根ざして生活できるか、理想とした働き方が実現できるか、というところを最終のゴールに設定しています。そのためには移住希望者の働き方だけじゃなく、地域側の受け入れ方や態勢も大切です。こういう人材が来ましたというマッチングをしないと、ただ人口プラス1で終わっちゃう。その人がどんどん、プラス1以上に輝いてもらえるために地域の自治協議会、自治会など地域側に対してまちづくりのコンサルティングや、一緒に未来像を計画する取り組みもしています」と中川さん。令和5年度では、725組の問い合わせがあり、実際に移住されたのは70組140人とのこと。「設立当初から移住者の数は増えてはいますが、丹波は人口約6万人のまちです。多いとは思っていません。都会でしんどそうに悩みながら働く友人を見ていると、丹波に来たら解決するで!と思うこともあります。田舎の良さ、余白の多さに目を向けると、単にリフレッシュできるというだけでなく、やりたい事業がうまくいったりするという可能性もあります。移住でもいい、二拠点生活でもいい。都会で暮らすもっとたくさんの人にとって、田舎という拠点を持つことはとても有意義なことです」。

自分の生き方を肯定しながら
移住希望者へ暮らし方を提案
「たんば“移充”テラス」に関わる4名の移住相談員は、全員がUターン、もしくはIターン。それぞれが丹波で起業したり、古民家を改修して暮らしたり、子育てや趣味など、田舎暮らしを実践しながら移住窓口の仕事をしています。「仕事と暮らしが一体化している相談員がそろっています。生活の延長線上で、丹波で暮らしたいという移住希望者にお話をしているといった感覚です。スタッフには、パラグライダーをするために移住してきた人、大企業を辞めて全財産を寄付し、裸一貫で新しいチャレンジをはじめた人など、ユニークな軸を持っているメンバーが集まっています。そういう人たちだからこそ、子どもが熱を出したら会社を休む、といったあたり前のことは大切に、自分の生活や家族、ライフスタイルも優先しながら、移住相談の仕事をどうやれるか、チームで話し合って調整してシフトを組んでいます。経営者としては必死ですが(笑)、彼ら彼女たちがそういった生き方を体現できていないと、相談員として丹波での暮らしを提案できません。100%とはいきませんが、私も含め、日々チャレンジしながら生きていると思います」。

働き方や地域を選ぶことは
生きがいを考える一つのツール
兵庫県は広く、風土や特徴の異なる多彩な地域で構成されています。「つまり、自分にあった拠点、働き方がたくさんあって、選択肢がいっぱいあるということです。多様な暮らし方が実際に隣り合わせで存在しています。地域の良さを見比べられることは、移住という手段は、これからの生きがいを考えるためのツールだと捉えています」。中川さんは、その上で、自分の軸やスキルを認識しておくことも大切だと話します。「田舎といってもそこには社会があります。社会が求めること、お金になること、自分が好きなこと、得意なこと、その全部を暮らしの中で重ねるには、ある程度の社会経験やスキルは必要だと考えています。まずはさまざまな学べる環境に身を置いて、必要な場所が丹波なら来てほしいですし、人によっては別のまちを紹介することもあります。仕事と暮らしの場所は違っていい、いつまで暮らそう、いつから暮らそうと、時間軸で考えてみるのも大切です」。中川さんは現在、市の多文化共生計画にも参加し、行政に提言をする立場になっています。「移住を体現する一人のプレーヤーとして思うことは、人口を増やすだけでは本当の意味で、まちを存続できなくなるということ。サイズや人口に合わせて、暮らしを最適化すること、ここで活躍したいと思う人が増える環境づくりをしていきたいです」と、めざすべきまちの姿を思い描いています。
一般社団法人Be×ひょうごの可能性
生きがいを大切に居場所を選ぶ
(keyword)
1.地域の特徴や問題を知る
2.まちや人と共存しながら生きる
3.自由に生きるための経験とスキルも大切